率直に言うと、るろ剣をほぼほぼ知らず、
「あのキャラがこうなるんだ!」とかそういう楽しみもない私から見ると、
おろ?と思いました…。(おちょくるな)
銀英伝は知り切れトンボだったものの、
味方側も敵側も色んなエピソードが詰め込まれていて、単純に面白かったんですよね。
今回、そのわくわく感はなく、
エピソードの密度から言っても、1本ものにしなくてもいいくらいで、かなり薄かったかな。
オリジナルキャラを作ってある程度はオリジナルストーリーにしてますが、
漫画のキャラクターを借りて、
よくある宝塚のストーリーをなぞっているような、既視感の方が大きかった。
『ルパン三世』もかなり宝塚に引き寄せてきて(宝塚のイメージを逆手に取って)、
あれは1時間半にまとめる上で、仕方なかったなと思ったのですが、
今回は1本ものなので、もうちょっと踏み込んでほしかった。
あ、でも阿片シーンが割と生々しく、長く。
奇しくも清原事件の直後なので、客席みんな神妙な面持ちに。
あと、個人的には、明治の和洋折衷の奇天烈な感じが、
いかにも2.5次元的で、宝塚でやるとどういう美術になるんだろうと楽しみだったんですが、
ほとんどなかったかな…。
だいもん演じる加納がフランスかぶれなので、
後半は思いっきり西洋テイストが入ってくるけれど、
それはいかにも宝塚的なベルばら的な左右対称階段!シャンデリア!で処理されていて、
せっかくなのにもったいないなと思いました。
階段のセットは盆でぐるぐる回して、裏側もかなり作りこんでいたので、
お金はかかってるかなと思ったけど。
あと、映像も普通だった。
前半は液晶パネルで島原や文明開化の背景として、
あと、長州とか地図を出すのにもスクリーン使ってましたっけ?(うろ覚え)
斎藤の銀橋渡りで悪・即・斬が出まくったり、
極めつけは薫のソロで、後ろにちぎ剣心のスライドショーが流れ始めて、
だ、ださい…と目がくぎ付けになりました(こら)
音楽も主題歌含めほとんどが「ザ・宝塚」のもの(太田健さん、青木朝子さん作曲)
ただ、メロディーは宝塚なのに打ち込み系のものが多く、
その取り合わせが妙に安っぽい感じでした。
1幕前半は江戸パート。
普通の日本物っぽいさらっとした幕開き。
竹藪の中戦う人斬り抜刀斎。
彼の人斬り時代と、
新選組 加納惣三郎との因縁(というほどのものでもないけど)を見せる感じ。
スライド可能な液晶パネル?に背景を映してた。
島原の場面はそのパネル前の芝居で、ちょっとごちゃっとしてたかな。
文明開化は瓦版売り(真那春人さん)、新聞売り(久城あすさん)を筆頭に、
アンサンブル中心。
文明開化祭りの『MITSUKO』を思い出した…。ちょっと間延びしたかな…。
赤べこや薫の剣術指南のわいわいしたシーンも、
もう少しスピーディーにできたんじゃないかと思ったり。
あと、オープニング的なものが存在しなくて。
今回、敵・味方がはっきりしているものあるし、
それぞれビジュアルのクオリティが高いので、
思いっきりベタに顔見せ的な感じで登場した方が盛り上がったかなと思います。
今回、場面的にボルテージの上がることがほとんどなかったんですよね。
鳴り物入りのわりには、物語、美術、音楽、全てにおいて冒険が少なく、
随分宝塚の方に引き寄せてるなぁと思いました。
1幕最後から2幕は小池先生お得意の階段全員集合でした。
でもピンパーネルみたいに絵的に綺麗な場面はほぼ皆無に等しく…。
2幕の剣心、加納の階段での立ち回りはじわじわ盛り上がったけど。
あ、ちなみに、パンフはいつもよりも気合が入ってて、
見開きピンナップ的なものもあり、ちょっと感動しました。
ちぎ(早霧せいな)@緋村剣心は、
元々の宝塚的でない声やせりふ回しがよく合っていて、
ルパンの「ふーじこちゃーん!」なり今回の「おろ?」が、
痛くなく、ナチュラルに2次元と3次元を繋ぐ貴重な人だなと改めて思いました。
しかもそれは2次元を忠実に守る(というか奴隷になっている)わけではなく、
しっかり自立して3次元にキャラクターを根付かせられる、
ちゃんと芝居のできる、という意味での貴重さ。
役柄にも依ると思うのですが、
ルパンに引き続き、皆を有無を言わさず引っ張る「トップ」という色が薄く、
やんわりと見守る感が強い人なのだなぁと思いました。
この個性にあう良い役がくればいいですね!
(そう思うと次の
『ローマの休日』がしっくりくる気がする)
咲妃みゆさん@神谷薫は、なんかばっさばっさしてて元気だった。
声が独特なイメージがあったけど、
今回はまた少し声のイメージを変えてたのか、ヒロイン声でした。
耳なじみのいい声音をたくさん持ってますよねー!
剣心との微妙な関係も可愛かった。
とにかく動きがばっさばっさしてて、気圧されました。
ばっさばっさ…(しつこい)
だいもん(望海風斗さん)@加納惣三郎。
まず加納惣三郎について、
わたしは自分の中で新選組ブームが巻き起こった時に読んだ司馬遼太郎の「新選組血風録」や、
『誠の群像』で彩輝直さまがすみれコードぶっちぎってた印象が強すぎて、
もっと普通に変態でいいのにな…(ちぇっ)と思いました。
花魁身請けしたい→辻斬り→フランスかぶれで阿片取引
…何で?(知らん)
何か信念がありそうでないし、じゃあ普通に剣心にやたら執着がある感じにしてくれたらな、と。
薫じゃなくて剣心縛って打掛着させたらよかったのにな、と。
ゲイだったらよかったのにな、と。(結局そこ)
阿片に酔わせた剣心をどうにかしてほしかったなと思いますね(爽やかに)
しかし、だいもんがまたしばらく見ぬ間に、ドヤ感が増してた。
ソロ歌い始めると、トップ並みの清々しいドヤ。
まるで、かつての香寿たつきさまのような…盤石の2番手。
歌いこなす、芝居もできる、そして、その存在がものすごーく宝塚。
ああ、わたしは今宝塚を観てる…宝塚を観ているのだ…と
嬉しくなって2回反芻したくなるような、宝塚の男役。
何か思ってたのと違う方向性の変態だったけど、
ルパンの時肩すかしに合った分、ちゃんと悪役でよかった。
けど、ジェラール山下て!(デューク更家的な)
彩風咲奈さん@斎藤一が、よかった。
いつも彩風と彩凪の区別がつかないとおちょくってたけど、
今回、ものすごい儲け役だったと、思う。
なんせカッコいいのだ。制服姿に刀さして、くわえ煙草をしてる立ち姿がたまらなく。
カッコいいは正義。
「2.5次元ってこういうことでしょ?」と四の五の言わせない、圧倒的なビジュアル力。
声もいつもよりも低め、台詞回しもかなり作りこんで。
客席降りのサービスもありつつ、殺陣よろよろなのはご愛敬(がんば!)
ファン増えるでしょうねー!
彩凪翔さん@武田観柳は、
阿片密売、ガトリング砲入手を企てる悪党。
見た目も中身もかなりエキセントリックで癖のある役。
すっごい思い切ってやってて、でもちゃんと綺麗だった。
『ルパン三世』ではくすぶってた彩凪・彩風の個性が上手く爆発したなぁって思ってた。
ただ、結構長いガトリング砲の歌が、銀橋ではなく本舞台であって、
だいもん達を従えつつ中心で仕切らなければならず、
そこはちょっと荷の重さを感じてしまいました。
活躍が目覚ましすぎる花の95期の一人、月城かなとさん@四乃森蒼紫。
一昔前の男役らしい端正な顔としっかりした体つき、渋い落ち着いた声。
ことあるごとに出てきては去っていくだけの、
さほど本編には絡んでこない役柄なのに、貫録がヤバい。
出てきて佇んでドヤって去っていく。
こいつはただ者でねえ・・・!ゆくゆくだいもんのドヤを受け継ぐのでしょうね…。
歌も結構安定していて、今後の雪組を担っていくのだなと思いました。
ちなみに、この四乃森が従えている能面つけた人たちが、
よくわからないなりにださくて怖くて正解を見いだせずにいました。
大湖せしる@高荷恵は、お得意のミステリアスなおねえさま路線。
せしるさん、いい女だよな…と改めて。
こういう「女役」ってやっぱり貴重です。ほんのり色気があってね…。
薫をおちょくりながら剣心にぺたぺた触るとことか、
待ってました!と膝を叩きたくなる感じ(何で)
退団は残念ですが、いいキャリアだったなと思います。
毎公演すごくいいポジションで、質の高い女役さんでした。
これからの人生に幸多からんことを…。
鳳翔大さん@相楽佐之助。
たまに台詞回しがまさおに聞こえてまさおの幻影がちらつきました(もはや呪い)(こら)
鳳翔さんも2.5次元だったなー。
蓮城まことさん@桂小五郎/ベルクール。
桂小五郎は1幕幕開きの物語中心。
ベルクールとしては大きな見せ場はなかったけど、
2幕最後、さよならを意識したちぎとのやり取りが一言。
剣心の影は永久輝せあさん。髪の毛があらぶってた。
台詞はないものの、要所要所良い場面で出てきて、印象的でした。
2幕、剣心が阿片の毒に侵されつつ、葛藤する時に出てくるのが特に印象的。
あとは、剣心たちと行動を共にする明神弥彦に彩みちるさん。
まだ研3…?
ほぼほぼ全編出ていてしかも舞台度胸が据わっていて、出来上がっている…。
おそろしや・・・。
縣千@清里は剣心の左頬の傷をつけたエピソード的には重要な人物。
回想シーンなので一瞬でしたが、研一でこの役付きはすごい!
実は
音楽学校文化祭でこの人は絶対来る!
と打ち震えていたのは、縣さんでした。
今後も期待してます!
ショーはいつもの小池先生の通り、2番手銀橋渡りから。
だいもんがドヤドヤ。
群舞はチギがまた大階段で座ってた。(最近はやってる?)
こういう芝居で割と爽やか系をやってた時の後のフィナーレで野郎っぽいとぐっとくるよね。
(好きなのは
きむきむのロミジュリ)
きんぐとの絡みもあり。
衣装がちょっと変で基本洋物なのに襟が着物っぽい。
デュエットダンスはモノクロで何故かスパニッシュ風。
咲妃さんは上半身は長袖だけど、スリットばーんみたいな大人の色気。
結構激しい感じでばっさばっさ(咲妃さんの代名詞)踊ってて、
どさくさに紛れてちぎにキスしてった。(いいね!)
フィナーレもトップ3は変な着物風スパン衣装でした。
うーん…そのままの衣装でも良かったのになぁ。。。
というわけで、内容的にはおろ?でしたが、
雪組を楽しむ上では非常に面白かったです!
でも、せっかく2.5次元をやるのなら、
「宝塚でしかできないことをやる」ということは、
必ずしも全てを宝塚側に引き寄せるということではないと思うので、
宝塚ブランドにあぐらをかかず、
もっと演出的にも美術的にも音楽的にも新しいものを取り込んでいって、
より大きな何でも取り込める宝塚になってほしいと思います。
歌舞伎だって漫画の力を借りて『ONE PIECE』をあんな感じでやってるわけだし。
では、他も感想たまってるので、徐々に上げていきますー!
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