宝塚は『1789』は映像で見たのみ。
梅芸で2回見ました。
幕開きとか、アントワネットとフェルゼンの歌とか、1幕最後とか、ソレーヌの出番とか、
宝塚版から大きく変わってる部分もあり。
八百屋舞台で、舞台奥に横幅いっぱいの大きな額縁型のセット。
映像を映すスクリーン代わりとなりつつ、それが傾いて、そこをロナンが駆け上がったり、
前方にぐっと倒れて、舞台面と水平になったり、
(舞台面にいる民衆、上部にいる王族たちを隔てる壁になる)
そのまま舞台面まで降りてきて、床と一体になったり。
アントワネットの登場シーンのケレン味にはぴったりだし、
技術的にはすごいなんだろうなと思ったけど、
全編通して観ると、そこまで効果的には思えなかった。。。
***
てやんでえ口調のロナンに小池徹平氏。
野郎感を出そうとするほど、
NHKの人形劇的な冒険活劇風の可愛げが増す。
そして、「実は王族」設定なんじゃないかと訝しむほど血筋を感じさせる美青年。
神田沙也加嬢と並ぶとまるでミッキー、ミニーのキャラクターショーのように愛くるしい!
(でも実は淡泊に、お互い見つめ合わず、正面向いてるのだけれど。)
声量が弱いですが、裏声が澄んでいて綺麗。
対して、加藤和樹氏の農民感がすごい。(褒めてます)
鬱屈した感情がふつふつと湧き上がり革命に身を投じるけれど、
歴史に名も残らず、散っていくのが、とてもよく似合ってた。
ダンスは相変わらず面白い。
「俺の権利の行使する!」の堂々宣言の後、踊り始めるのがたまらんです。
権利で踊られたら、こちらとしても「お、おう…」というしかない。
オランプは、ロナンへの寄り添い方とか、ラマールのあしらい方とか、
芝居のテクニック的に宝塚の娘役力を駆使する役だな、と思う。
その意味でねねさんがかなり有利。
歌はふるふるにならずに思い切って声出してた。
すごい思い切ってるから外れることもあるけど、
あまり気に留めずにとにかくでっかい声出してた。
逆に、宝塚時代のあのふるふるはなんだったんだろう、っていう・・・。
神田沙也加嬢は神田沙也加嬢だった。
やわらかな物腰の奥に目が笑ってないような体温低めのミステリアスヒロイン。
ロナンに銃を渡す時、「ほら行ってこい!」と言わんばかりに、
いきなり男勝りにがしっと渡すのが面白かった。
アントワネットは残念ながらお花様でしか観てません。
登場シーンの美しさには釘付け。
ただ、うーん…ニンではない。
カラッとポップで発散型の芸風ではない。
じめっとエネルギーを内に貯める、内向的で暗い持ち味なので、
(それがエリザベート役者と呼ばれる所以なんでしょうが)
泣きの芝居が必要以上に前面に出てる気がして、ちょっと齟齬がありました。
革命家3人組ロベスピエール、ダントン、デムーランは長身ぞろいで、
さすが並ぶと絵になるし、いろんな意味でバランスはとれてる。
ただ、正直なところ、面白みには欠けた。
上原ダントンは台詞が棒気味に聞こえる部分があったり、
武器の歌も曲調のせいか、あまり上手く聞こえなかったり。
彼が持つ、民を率いる類い稀なカリスマ性が活かされる役でもなかったので、ちょっと残念。
ダンスは加藤君ばりに面白くて(こら)、斬新なモダンダンスかと思った。
古川くんは、真っ青な具合悪そうな顔で目を血走らせながら激しく歌い踊ってた。
エネルギーを周りに伝播させるより先に、
力尽きて誰よりも早く死んでそうなロベスピエール。
沖田総司的な。
ちなみに、今回の一番のお気に入りは2幕頭で古川くんが歌う「誰の為に踊らされているのか?」の
「腐ったはらわたえぐりだす」です。
(本当に抉り出しそうな上原君とかじゃなくて、弱ってる古川くんが青白い顔で言うのもいいし、
直後の早口コーラスの「えぐりだす!」が最高)
渡辺大輔さんは今回抜擢で、
これからも大箱ものが続くので注目してたけど、正直、歌も芝居もピンとこなかった。
歌はかなり不安定でブレがあって、
芝居もキャラクターの背景が浮かび上がってこない。
対するもう一人のイケメン、広瀬さんのキャスティングには唸った。
3個1の革命家ではなく、
アントワネットと対になって渡り合わなければならないフェルゼンに、
広瀬さんを持ってくるのはある意味賭けに近かったと思う。
なんせ宝塚で刷り込みのように見せつけられている美しいフェルゼンのイメージに加えて、
相手のアントワネットは宝塚OG。
しかもお花様に至っては至高の姫役者と呼ばれる人。
そこに見劣りせず、美しいカップルとして存在していられるだけで結構なスペックだと思う。
しかも、いわゆるコスプレショー的な単なる美しさじゃなく、
品の良い憂いを帯びた雰囲気をまとい、居ずまいもきれいで、マントさばきも颯爽と。
さらには少し低めの独特な響きのある声で、歌もうまい。
芝居も説得力ある。
こう書いてスペックの高さに改めて
…すげえ(今更ながら白目)
今回1番衝撃を受けたキャストさんでした。
これからティボルトも待ち構えてますし、楽しみ。
(逆に、「エリザベート」シュテファンではもったいなさすぎる。。。)
アルトワの吉野圭吾さんはゆうさまかと思った。
イメージを覆すドスのきいた声で超絶かっこよかった岡幸二郎氏のペイロールと共に、
あの衣装を(宝塚じゃなくて男性が!)完ぺきに着こなせることへの感嘆。
カーテンコールで岡さん、吉野さんふたりで前に迫り出して、
悠々とお辞儀するのはこの作品のハイライト。
3D映画ばりに眼前に迫り出してきそうな濃密さで、
ひれ伏したくなったのはわたしだけじゃないはず。
満腹!生きててよかった!
ソレーヌのソニンさんは見せ場たっぷり。
パン屋襲撃シーンの「世界を我が手に」がカッコよすぎて、
その後一瞬にしてパン屋と和解して、前につんのめりそうになる。
あれだけ盛り上がらせといて、この仕打ち。
ダンサーさんたちはアクロバット系の人たちが半数?
ただ、ピンと来なかったというのが正直なところ。
エネルギーがあるようで、こちら側まで届いてこないような。
女子ダンサーはパン屋襲撃のところの怒れる顔と肉体の躍動に、気持ちが昂りました。
フランスミュージカルって、
芝居そっちのけで、1曲1曲ショーアップして聴かせるイメージがある。
今回も、元々ドラマは非常に薄味なので(MAと2本セットで見てちょうどいい感じ)、
そこは割り切ってパン屋的なショーアップされた感じで、全編見たかったなと思います。
でも、小池先生は、芝居として一本筋を通そうと、わかりやすく場面をつなごうとする演出家。
ベクトルが真逆。
日本版「エリザベート」は、まさに、そのつなぎを評価されてると思うのですが、
そのつなぐ手段として、出囃子みたいな音楽とか、場面転換BGM的なものを使ったり、
幕前芝居(変形幕)を多用したり、
それが一昔前の宝塚(ベルばら的な)みたいで、新しいミュージカルのはずなのにダサい、みたいな。
ぼんやり見てると、宝塚の舞台に男の人が特出で出てる、みたいな錯覚を起こすくらい、
場面のテンポ感がものすごく「宝塚」で、何か、お尻がむずむずとした。
うーん。
宝塚式の様式的な演出(しかも一昔前)が、普通のミュージカルに持ち込まれる違和感。
特にこれだけキャストも一新して、楽曲も全部録音で、と、
重々しさを取っ払って「次世代ミュージカル」を打ち出した作品だから余計に、
ちぐはぐになってしまってたのはあまりにも惜しい。
でも、周りの評判がすこぶるよく、思ってるのは自分だけなんだろうか。。。と自信をなくす。
関係ないけど、2幕で2カップルが歌う「世界の終わりがきても」が、
何度聞いても吉崎メロディー(宝塚版からの追加曲)で、
ここでも一気に宝塚モードに切替わって面白い。
今回の追加曲は、「革命の兄弟」。
耳なじみが良く、主題歌的に使われていました。
俺たちは兄弟だ 革命が生み落とした
いつか時代が変わったら 肩を組み
パリの街を歩こう 夜通し朝まで
それこそが 革命だ 我らの
朝まで歩こう 肩を組み
…良い歌詞でした。
メロディーも優しい。
悲しいことに、テロやヘイトクライムが続いて混乱する現状にも通じてしまう。
いつの時代も願わずにはいられない未来。
ツッコミは多々ありながらも、いい曲で締めくくられ、余韻ののこる作品でした。
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